[Rensa]日ノ瀬和美~二人~ 第五話(全六話)

『事実だ』
「あたし……あたしがぁぁぁ……!」
 闇の言葉に頭を抱え、悶え苦しむ和美にわたしは触れた。生まれるあのとき以来、はじめて和美に触れられた。
『もちろん、ウソだよ』
「アンタ……」
『もしかしたら、本当に身体は丈夫だったかもしれない。でも、わたしは生まれるのが怖かった。生きる気力がなかった。それは、和美だって見てたでしょ?』
「そう……、だから、あたしは……」
『うん。だから和美はわたしを救ってくれた。生きる力をくれた。いっしょに生きようって言ってくれて、わたしは生きることができた』
「でも、でもそれは……!」
『間違ってないよ。和美が手を差し伸べてくれたから、わたしは今もいるの。楽しい毎日だよ。生きてるのが苦しいときもあるけど、でも、楽しいんだよ。和美といっしょだから。和美といられるから。これからも、いっしょだよ』
「……あり…がとぉ……」
 和美が抱きついてくる。わたしも抱きしめる。わたしたちは二人で一人。これからも、一心同体。
『ふむ、陰は陰のまま生きるか。それもまた一興。が、身体は認めておらんようだ』
『え?』
 身体が揺れていた。跳ねていた。暴れている。
『二つの思考に身体がついていけなくなっている。このままでは、二人とも崩壊するぞ』
『それならそれでいいよ。今さら一人になんてなれないから。ね、和美?』
「……」
 和美はしばらくジッと考え込み、わたしを突き放した。
「和美……?」
「……今まで、ごめんね。アンタの身体のかわりには物足りないだろうけど、これからは、これを使って」
『なに…言ってるの……? ヤダよ、そんな冗談、ヤダよ!』
「名前もあたしのお下がりになっちゃうけど、カンベンしてね、日ノ瀬和美」
『ヤダったらっ。こんな貧相な身体いらない! 胸ちっちゃいもん!』
「うわ、ヒドイな。そんなふうに思ってたのかよ」
『そうだよ。虫歯だらけで、髪もパサパサで、肌の手入れもなってなくて、ぜんぜん……ぜんぜん女の子らしくなくて、こんなヒドイの、和美しか使えないよぉ!』
「だから、これからはおまえが女の子らしく磨いてくれよ。髪を伸ばして、リボンなんかしてさ、アハ、ゼッタイ似あわないな」
『だから、だから和美がぁ……!』
 和美が笑顔で首を振った。
『もうアンタが日ノ瀬和美だよ。大丈夫、ずっと側にいるから。今までみたいに、ずっとずっといっしょに……』
「和美ぃ!」
 わたしの呼びかけが引き金になったように、光が溢れた。
 そして、わたしは初めて、目を開いた。

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