[Rensa]日ノ瀬和美~二人~ エピローグ

 それから三年後、わたし――日ノ瀬和美は高校二年生になった。
 『和美』の声はもう聞こえず、正体不明の影もあれ以来見ない。でも、街を浮遊する霊さんは今も視え、ときどき会話をする。
 そんなある日、学校の帰りに公園で霊さんと雑談していると、体格のいいお兄さんと、赤毛のお姉さんが現われた。不似合いそうでお似合いの二人だと思う。
「この街の隙間に、闇が潜んでいる。おまえさん、霊感が強そうだから気をつけろ」
 初見でそんなことを言う。霊媒師なのだろうか。
「それなら三年前に会いました。今は見ないですけど」
「そうか……。もし厄介ごとに巻き込まれそうになったら、ここへ連絡してくれ」
 名刺を渡される。『大西洋魔女協和会議日本支部第二術師隊・伊吹一葉』と書かれている。どこまで本気なんだろう?
「……はい、わかりました。えと、無料……ですか?」
「商売だ。ま、学割くらいはつけてやるよ」
 レスラーのようなお兄さんは、人懐っこそうな笑顔を浮かべて手を振った。
「一葉、遊びじゃないんだからねっ」
 赤毛のお姉さんがお兄さんに文句を言う。「わかってるよ」とお兄さんもやり返しながら去っていった。
「世の中広いなぁ」
 名刺を生徒手帳に挟み、ポケットにしまった。
「……でも、意外に早くお世話になるかも」
 ちょうどよく彼が通り過ぎる。
 平凡で、平均で、平和そうな少年。隣のクラスの夏目有生くん。
「あの人も、わたしと同じ……」
 街の隙間で、闇が興味深い眼を光らせていた。   <了>

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