[Rensa]日ノ瀬和美~二人~ 第四話(全六話)

 再度の入院。一時、本当に心臓が止まるかと思われるほど病状は悪く、二日経った今も呼吸器は外されていない。
 それなのに、わたしは遠くで彼女を見ているしかできない。励まそうにも、心にもない言葉しか浮かばなかった。
 そして、あの影が来る。
『やはり耐えられないか』
 わたしに語りかけているようではなかった。
『いずれは壊れる運命だったのだ。とくに、その弱い身体では。せめてもう一対の身体であれば、まだ耐えられたであろうが』
 もう一対……?
『聞こえるか、弱き身体に宿りし魂よ。一つだけ答えてほしいものだ。なにゆえ、強き身体を捨て、その脆弱な身体に宿ったのか』
「なに……、何を言っているの……?」
 和美が答えた。わたしとの同調率が高くなっているのか、影の声が聞こえているようだ。
『知らずに宿っていたのか?』
「だから、何を……?」
『無知ゆえに呼び込んだのか、それとも生への執着か。どちらにしても面白い事例だ。実に興味深い』
「答えろぉ!」
 和美が叫ぶ。心が脅えているのがわかる。ある予測を立てているのがわかる。それは、彼女を全否定する答え。
『気付いたのだろう? 表であるはずのおまえが、実は陰に救われていたのだと』
「!」
 和美といっしょに絶句する。最悪の予想が的中したのだ。
『本来死ぬはずであった和美は、陰の生命を取り込むことで生きながらえた。自分が助かろうとするあまり、陰を弱者として扱い、命を吸ったのだ』
「う…そ…だ……」
『さて、真実は和美、おまえしか知らぬ。が、事象だけを見れば、弱者が残るために強者を吸ったのは確かだ。おまえは、陰にいる彼女を取り込み、貪欲に生にしがみついたのだ』
「ウソだぁ! ウソだ、ウソだ、ウソだ。あたしは、あのコが弱っていくから、離しちゃいけないって、いっしょに生きたいって、だから……!」
『死ぬ間際の光芒一閃。陰を数瞬だけ上回ったに過ぎん』
「それじゃ、あたしがあのコを道連れにしたっていうの! 丈夫に生きるはずだったあのコを、あたしが殺したって言うの! ウソだよ、ウソだぁ!!」
 和美の絶叫に、闇は愉しそうに奮えていた。

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