[Rensa]日ノ瀬和美~二人~ 第一話(全六話)

 日ノ瀬和美は生まれる前からワガママで突っ走るタイプだった。
 わたしだけが知っている、それは秘密。
 弱くて臆病であきらめの早いわたしを、和美は叱って引っ張ってくれた。
「そんなとこにいたら消えちゃうだろ。さっさとこっち来いよ」
『でも……』
 前に進めないわたしに、今度は笑む。
「いーじゃん、いっしょにいなよ。あたしがアンタの立場なら、蹴落としてでも移住するよ。だから、いいんだって」
『……うん』
 まっさらな温かい手をつかみ、わたしは飛んだ。驚くほど軽く、わたしは彼女の元にたどり着いた。
「これからはいっしょだけど、あくまであたし主導だからね」
『うん、わかってる……』
「ま、不便かもしんないけど、仲良くやろうよ」
『うん!』
 やっと笑えたわたしに、和美はニッカリとした。
 その日から、わたしと和美は一心同体となった。

 生来の性格というのはあるものなのだ。後天的に矯正される場合もあるだろうけど、少なくともわたしと和美は変わらず育った。明るく快活なノリで行動する和美と、そこから10歩は離れて心配そうに彼女を見守るわたし。ときどき衝突もするけど、和美は話せばわかってくれるので、ケンカは長く続かない。和美といるのは楽しかったし、和美もいつも笑っていた。
 小学校にあがり、二人の役割はよりはっきり分かれるようになった。運動の和美、勉強のわたし。二人で得意分野を受け持つのだから、成績はかなりいいほうだった。
 また、そのころ、わたしたちは別の能力を持っているのに気付いた。
 いわゆる『視える』のだ。
「あそこに何かいる?」
『うん、おばあさんがいる。交通事故だったみたい』
「ふ~ん。じゃ、あいさつだけしていこうか」
『うん』
 和美にはモヤのようにしか見えないらしい。五感を持たないわたしだから、しっかりとわかる。わたしの能力が和美に影響しているということだろう。
 この能力に気付いてからは霊さんのほうからも声をかけられるようになり、周囲からは『独り言が増えたね』と言われるようになった。

 高学年になると、わたしは肉体の変化に心がついていかなくなってきた。和美は大人になり、わたしはその変化に戸惑う。痛みも感触もないわたしには、自覚は知識でしかなかった。だから少しずつ、和美との間に齟齬(そご)が生まれる。
「だからぁ、今日は体調悪いんだって。アンタにはわかんないだろうけどさっ」
『……うん、ごめん』
 わたしは申し訳なくなって、隅っこに隠れたくなる。
「あー、もー、なんであたしだけなんだっ」
『……』
 おたがいにケンカをしたいわけでもないのに、なぜかそんなふうになってしまう。
 でも、和美は優しいからすぐに言葉を付け足してくれる。
「ま、アンタのせいじゃないし。かわりに宿題やってくれればいいよ」
『……うん、がんばるねっ』
「よろしく」
 和美の照れくさそうな笑顔が好きだった。
 けれど、いつまでも変わらずにはいられない。普通じゃない事象には、普通じゃない結末が待っていた……

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